【第13号】冷え症と冷え性のセルフケア

冷え症と冷え性のセルフケア

 

冷え症と冷え性

(1) 冷え症と冷え性:冷え症は手足や腰が冷たいと感じ、治療を必要とする症状を指します。一方の冷え性は冷たいと感じやすい体質を指します。多くの場合、冷え性の人が冷え症を訴えます。従って冷え症の症状に対する対症療法では一時的に冷え症状は改善しますが、また冷えに悩まされます。冷え症の治療には、その原因となっている「冷え性」への治療が必要です。ただし、冷え症の原因は冷え体質だけではありません。自律神経機能の変調や血管の病変、代謝の異常など様々な病態にって発症しますので原因を明らかにして対処することが重要です。

(2) 冷え症の定義:冷え症とは、「日本では社会通念として存在し、通常の人が苦痛を感じない程度の温度環境下において、手足末梢や両下肢などに異常な寒冷感を自覚し、慢性の経過をたどっているものをいう。」あるいは「身体の特定部位のみが特に冷たく感じ、程度の差はあれど何らかの不快感を伴うものを言い

、不定愁訴の一種とされている。」など統一した定義はありませんが、図1に示すように一般的には四肢末梢の冷え感として捉えられています。 

冷え症の実態-夏冷えと冬冷え

 女性において冷えを訴える年代は、20代~40代が多く、夏でも冬でも冷えに悩まされている女性が多いことが分かりました。夏は冷房、冬は気温の低下によるものと思われます。まさに冷えに敏感な体質、即ち「冷え性」が根底にあることを示唆するものと思われます。しかも冷えを訴える身体部位は夏、冬ともに足先と手先であり、腰の冷えは冬で50代が多いといった特徴がみられます。図2は年代別に見た冷え者を示します(花王、女性の冷えの意識実態、2006より)。

図2 年代別に見た冷え者

東洋医学からみた冷え

 東洋医学では、「冷え性」は身体を温める「陽気」の不足と捉えます。

身体を暖める力が不足していますので、寒いとは感じない室内においても冷えを訴えます。いずれにしても「冷え性」の本態は、陽気不足ということですから、陽気を補い、体質改善が必要です。寒い環境に長時間、暴露すると冷えが発症しますが、この場合は「冷え症」とは捉えません。冷え性を放置しておくと、やがて身体各部の正常な機能が損なわれますので、冷え性の改善は病気予防に繋がります。

現代医学からみた冷え             

 冷えを発症させる原因は多岐にわたります。表1に示すように様々な病態により、「冷え」の症状が発症します。身近なところでは、脊柱管狭窄症、手根管症候群、胸郭出口症候群、閉塞性動脈硬化症などです。これらの疾患は、手、足あるいは腰の痛みを伴い、時には手や足のしびれや感覚障害を伴います。冷えにこれらの症状を併発している場合は、医療機関を受診してください。

表1 冷えを発症させる疾患

冷え症のセルフケア-ツボ温灸療法             

 上記したように、冷え症の本態は、陽気不足による「冷え性」ですから、陽気を補うことが大切です。このことに加えて「冷え症」の部位にあるツボを加えます。すなわち原因療法と対症療法の組合せが効果的です。陽気を補うツボが「関元」(臍から指四本幅下に取る)です。これに足の冷えは「三陰交」(内果の最も高い部位から指三本幅上で脛の骨の際に取る)、足先の冷えは「太衝」(足背で親指の骨と第2指の骨の交わるところの前のくぼみ)に取る)を加えます。

これらのツボに温灸を1回~3回行います。ヒリヒリ感を感じたらすぐに温灸を取り除いて下さい。